葬儀代・生活費写真はイメージです Photo:PIXTA

親が亡くなる前に、口座凍結に備えて預金を引き出すと、相続税調査で目をつけられる可能性があります。その理由は何なのでしょうか。相続前の預金引き出しの注意点や、口座が凍結後に預金を払い戻してもらう方法を解説します。(元国税専門官 小林義崇)

葬儀費用のために預金を下ろすと、脱税を疑われる

 相続税調査で、必ずといっていいほど狙われるのが、「相続直前の出金」(以下、直前出金)です。

 税務職員は、被相続人名義の預金口座の動きを見て、多額の直前出金を把握すれば、「申告漏れ」を疑います。このことは、国税庁が公開している「相続税の申告のためのチェックシート」に、直前出金に関するチェック項目があることからも明らかです。私自身、税務職員として相続税調査を行っていた頃は、直前出金の有無は確実にチェックしていました。

 直前出金が申告漏れにつながりやすい理由として、まずは「相続直前に預金を引き出したくなる事情がある」という点が挙げられます。