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新型コロナウイルス・ワクチンの接種が進んでいるものの、いまも多くの人が不安やストレスを抱えながら生活している。ネガティブな感情を声に出して表現することは難しくても、誰にも見せない文章として書き出すことはできるだろう。自分の感情や考えを書き記す「エクスプレッシブ・ライティング」は癒しにつながり、トラウマからの回復にも有効だ。本稿では、エクスプレッシブ・ライティングを効果的に実践するための3つのポイントを紹介する。


 ワクチンを接種して、体はパンデミックから抜け出しつつあるようでも、私たちの心はいまなおパンデミックの中を進んでいる。そこで、自分や同僚のために、この個人的および集合的トラウマを消化する場を設ける必要がある。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の「サンデーレビュー」に先日掲載されたコラムを読み、私は著述家として、ライティングの講師として、幾度も目の当たりにしてきたことに確証を得た。エクスプレッシブ・ライティング(筆記開示)は、私たちを癒してくれるのだ。

 文例や手本をもとに自分の感情や考えを詳細に書くライティングは、経験したことを消化して、これから進む道を思い描くのに役立つだけでなく、実際に血圧を下げ、免疫システムを強化し、全般的なウェルビーイングを高める。エクスプレッシブ・ライティングを通じて、ストレスや不安、憂鬱感が緩和され、睡眠やパフォーマンスが向上し、集中力や明晰さが高まるのだ。

 このような癒しのツールとしてのライティングの効果は、よく知られている。テキサス大学オースティン校の社会心理学者ジェームズ・ペネベーカーは1986年に、ある種のライティングがメンタルヘルスに与える影響を研究した。以来、200件以上の研究で、感情に訴えかける「エモーショナル・ライティング」が心身の健康を改善することが報告されている。

 代表的な研究では、個人的な動揺について1日15分、3~4日間、執筆した被験者は、健康不安のために医師を訪れる頻度が減り、精神的なウェルビーイングが高まった。

 2019年の研究によると、過去1年間にトラウマを経験した人が6週間にわたりライティングの介入プログラムを受けたところ、レジリエンスが向上し、鬱の症状、知覚されたストレス、反芻が減少した。臨床的鬱病の可能性が高い指標を示し、ライティングのプログラムを始めた被験者の35%が、臨床的鬱病の基準を下回ってプログラムを終了した。