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従業員アクティビズムが台頭する中、職場での政治的会話を自由にすることに懸念を抱えるリーダーも少なくない。議論が激化して制御できなくなれば、問題が外部に広まり、組織の信用を失墜させかねないと考えるからだ。何らかの方針を定める企業もあるが、政治的話題を禁止することは、むしろ多くのデメリットがあることを筆者らは指摘する。そうではなく、政治的相違に生産的な方法で対処する組織文化の構築がカギになるという。本稿では、その理由について論じ、従業員の政治的相違にリーダーが対処するための4つの方法を紹介する。


「声を上げよう!」「あなたのすべてを仕事に反映させよう!」

 この数年、多くの企業でこうした呼びかけ(あるいは命令だろうか)が、オフィスの廊下やズームの会話で響きわたっている。

 従業員がそれを文字通り受け止め、自分たちが深い関心を持つ政治的問題、すなわち気候変動、サプライチェーンにおける人権問題、性差別、人種差別などについて発言したとしても、リーダーが驚くことはないだろう。

 しかし、実際のところ、職場での政治的会話にはリスクが伴うため、リーダーは懸念している。

 従業員アクティビズムに関する筆者らの調査では、リーダーはこうした議論が制御できない、あるいは有害なものになる、職場の不和を引き起こす、仕事に集中できずに生産性が低下する、組合の承認を求めて闘う人が現れてマネジャーの権限を奪う、などを懸念していることが明らかになった。いずれも問題に発展すれば広く報じられて、企業の信用を失墜させるおそれがある。

 その結果、一部の組織では政治的会話を全面的に禁止し、そうした戦略を支持する声もあるようだ。

 たとえば、ハリスの世論調査では、職場における政治的議論を制限する全社的方針を、米国人の70%が支持している。また、グラスドアによると、職場で政治的議論をすることはいっさい許されないと、米国の従業員の60%が考えている。一方、ユーガブのドイツの調査では、労働者の44%が職場で政治について話題にするのは不適切だと答えている。

 しかし、政治的発言を禁止することで、組織に何らかの影響が及ぶことがある。

 最近では、ベースキャンプCEOのジェイソン・フリードが、「ベースキャンプのアカウントでは、社会的・政治的議論をしない」という内容を含む、一連の方針変更について発表した。すると、数日のうちに従業員の約3分の1が辞職し、結果的にフリードは謝罪することになった。

 その前には、コインベースCEOのブライアン・アームストロングが政治的発言を禁止したことで議論を招き、この時も複数の従業員が辞職した。

 リーダーは政治的発言を禁止したり、政治的変化を求める声を減らすために何らかの方針を定めたりするのではなく、職場での政治的相違に生産的に対処する文化を構築するほうが賢明だ。その理由と方法について説明しよう。